OECD(経済協力開発機構)によって国民1000人当たりの医師数をランキングにしたところ、日本は平均値をはるかに下回る28位でした。
この数字が提示されたのは2012年度の事ですが、2015年現在に至っても医師不足は解消されていません。
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が行った日本全国の病院を対象とした調査によって「現在の医師数に追加して必要な医師数」を比較したところ、地域包括ケア病棟算定病院が最も多くの医師を必要としていることが判りました。
地域包括ケア病棟算定病院の医師不足
地域包括ケア病棟算定病院は、2014年度の診療報酬改定の際に廃止となった亜急性期病棟などを補うために新しく作られた機関です。
■ 地域包括ケア病棟の役割
1. 急性期病棟からの回復期に入った患者の受け入れ
2. 在宅などでケアを行っている患者の緊急時の受け入れ
3. 在宅復帰支援
政府のイメージとしては、急性期病棟から患者を受け入れ、患者の在宅治療、生活復帰を支援し、また、在宅治療から再び入院加療が必要となった患者を受け入れ、他病棟などへの情報提供の役割を担うことが目的でしたが、実態としては急性期治療を終了した患者の在宅復帰や施設復帰を応援する病棟として運用されています。
そのため地域包括ケア病棟では、主治医、看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカー、その他のメディカルスタッフが必要となり、リハビリスタッフとして理学療法士などセラピストの確保が義務付けられているために一般病棟と比較して人件費が高くなる傾向があるのです。
一般企業と同じように、病院施設でも予算には限りがあります。
地域包括ケア病棟算定病院でより顕著に医師不足が起こっているのはそれもひとつの要因と考えていいでしょう。
3つの機能を持つ病院が最も医師を必要としている?
地域包括ケア病棟だけでなく、急性期、回復期、慢性期の3つの機能を持つ病院全般で医師不足の数字は顕著に表れています。
しかし地域や診療科による医師数の偏在にはこれまで同様の傾向があり、また、医師不足の実態を考える上では病院の規模や診療形態、病床数なども考慮しなければならず、単純に後どれだけ医師が必要か、という数字だけでは医師不足の現状を比較することはできないでしょう。
政府の地域医療構想によると、旧来の外部からは機能が推定しにくい医療機関を、機能によって分化することで各機関の連携をより緊密なものとして地域全体の役割分担を行うように計画しているようです。
在宅ケアを受ける患者の増加を考えれば地域包括ケア病棟の存在意義は確かなものなのかもしれません。
ですが、急性期病棟からの転換では収益減となってしまうなど、病院の存続にも大きく影響する不安要素があります。
2025年を目指して病棟の機能分化と医師確保、専門化を進める日本の医師不足を解消するには、人材を確保するだけの財源確保が課題となるでしょう。