東北地方の名門大学に「東北薬科大学」があります。
これが2016年4月から東北医科薬科大学として生まれ変わることになりました。
東北薬科大学に医学部が新設されると、日本の医師不足問題にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。
東北薬科大学から東北医科薬科大学へ
東北医科薬科大学の医学部はすでに教員の募集を終え、開設のための体制を整えています。
2015年8月の広報で医学部の開設が文部科学省から正式に認可された旨を発表し、また、定員100人の内55人を地域枠として入学させることも決定しました。
当初120人としていた入学枠が100人に縮小されたのは、120人に十分な教育を提供するだけの教員を確保できなかったからだと言われています。
医学部で6年間勉学に努めるためには3,400万円の学費が必要です。
地域枠で入学した場合、卒業後に定められた期間県内の指定病院で勤務すれば学費支援の返済を免除されるのです。
奨学金には2,600万円から3,000万円の種類がありますが、いずれにしろ高額な学費の自己負担分は国立大並みに抑えられるでしょう。
年間55人の医師が県内に拡充されるようになれば、地域内の医師不足が緩和、あるいは改善に向かうことは想像に難くありません。
場合によっては医師数が需要を超える可能性もあるでしょう。
近付いてくる2025年問題への対策として、こうした医師増員の取り組みは間違いなく必要です。
しかしその一方で、今回の医学部新設に当たって実施された教員募集が東北の医療現場に影響を与えるのではないか、という懸念が生まれています。
東北医科薬科大学、医学部新設に伴う東北医療体制への懸念
医師を養成できる先達者は当然ながら現在活躍している医師です。
医学部の新設に当たって、東北医科薬科大学は現員医師から約180人を予定として教員を募りました。
公式に発表されている6月時点での確保数は174人で、内訳として最多数を排出したのが東北大です。
◆東北医科薬科大学医学部教員の出身
・東北薬科大病院 43人
・東北大 64人
・東北各地の医療施設 27人
・他 40人
東北大学は東北だけでなく多方面に排出した医師を派遣し、日本の医療制度を底から支えてきた施設です。
医師増員が急がれる中で、教授や准教授の地位を希望する医師が増えれば派遣した医師を
呼び戻す可能性もあるでしょう。
特に医師不足が厳しい状況にある東北、岩手県では、こうした懸念に対する不安が表明されるほどになっています。
医療、介護の需要が最大に至る2025年、そしてその後の時代を見据えて、どうやって現状に即して医療制度を運用し、現場の補強に努めていくかが課題と言えるでしょう。