平成22年度に公式発表された全国の常勤換算の医師数は167,063人です。
ここから導き出された医師の必要数、つまり欠員は24,033人で、倍率は1.14倍を示しています。
しかし実際に欠員を補充するための求人が行われているのは18,288人に過ぎません。
必要とされる24,033人と実効求人数18,288人の間には6,000人近い開きがあり、この格差は人材を募集できない医療施設が存在する現状を示唆しています。
都市圏と地方では医師の偏在も見られ、算出された「1.14倍」以上の倍率の医師不足に困窮している地域があることは明らかでしょう。
医師必要数の地域格差と診療科格差
医師の絶対数不足と共に必ず議論されるのが「医師の偏在」ですが、地域別に見ると最も医師必要倍率が高いのは東北地方でした。
特に岩手県では平成22年度に1.4倍を記録しています。
2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災以降、東北地方からの人口流出は顕著で、医師の確保はさらに困難になっていることは間違いないでしょう。
地方における産科医不足が取りざたされる機会が増えているので、岩手県の産科・産婦人科不足の話題は一般的にも認知される段階に及んでいます。
平成22年の同調査結果で明らかになった診療科別医師必要数の倍率は、当時ですら産科1.24と突出していました。
大震災から4年余りが経過した現在においても現地での復興は十分とは言えず、住人の中には出産場所を見つけられない女性も出ています。
「お産難民」が社会問題のひとつと位置づけられるほどに追い込まれているのが産科という診療科なのです。しかし、これほどの窮乏を示す産科ですら、すべての診療科を見渡した中での最悪ではありません。
必要医師数の倍率で最も高い数値を示したのは救急科で、産科よりも0.04倍高い1.28倍を記録しました。
医師不足解消に向けた医師のメンタルヘルス
医師が不足する要因はさまざまですが、医師は離職率も高い職種です。
医師免許を保有しながら現場を離れる人材をどのように引き留めるかが、医師必要数の確保のために考えなければならない問題のひとつとなっています。
医師が離職する理由は基本的に忙しさ、人間関係、給与条件の3点に集約されますが、必要医師数倍率が最も高い救急科などに関しては「忙しさ」が圧倒的な位置を占めます。
休日であっても重篤な急患が入れば呼び出され、満足に休日を確保できないケースが少なくなくありません。
近年では医療従事者のための専門的なメンタルヘルスケアの必要性がクローズアップされるようになっています。
しかし現実問題として、医師をはじめとした医療従事者は忙しすぎて自らメンタルヘルスケアの診療を受けるような時間を確保できない方が多いはずです。
救急科医師が抱えがちなストレス要因
・重篤な患者を救えなかった
・難しい患者とのかかわりに負われて時間と精神をすり減らしてしまう
・継続的な睡眠不足
救急科だけではありませんが、こうした問題によって医師は追い詰められがちです。
医療従事者ならではのストレスをどのように解決して行くか、この回答を医師に提供し、問題を解決していく筋道が必要になるでしょう。