近年、産科と産婦人科の医師数が減少しており、それにともなって産科・産婦人科を掲げる病院数も減少傾向にあります。
2014年10月に行われた調査によると、産科および産婦人科を掲げている病院数は1361施設と過去最低を記録したのです。
ではなぜ産科医や産婦人科医は、このように減少してしまっているのでしょうか。
今回は社会問題化している産婦人科・産科の医師不足の背景とそれによる影響、さらにはその問題に対する取り組みを解説したいと思います。
産科・産婦人科医減少の原因
産科・産婦人科医減少の原因の1つとして、過重勤務が挙げられます。
産科・産婦人科で働く医師は夜間対応や休日対応が多く、労働環境が過酷になりやすいため、当直明けの診療や長時間の連続勤務も当たり前となっています。
さらに産科・産婦人科の常勤医のうちの4割を女性医師が占めており、中でも20~30歳代の若い女性医師が多くなっています。
それら若い女性医師の中には、妊娠中であったり小学生以下の子供を育てている方も多く、それによって当直免除を受けたりお産の担当を外れることがあるため、
ほかの医師にかかる負担が増えてしまっているのです。
そして産科・産婦人科医は訴訟リスクの問題も大きく、それが精神的・経済的に負担となって、医師不足に影響しているといわれているのです。
産科・産婦人科医減少による影響
産科・産婦人科の医師不足が進むと、その分産科・産婦人科病院が閉鎖される動きが出てきます。
一時期は地方の産科・産婦人科医が都会に集約される傾向が続いていたので、地方病院の閉鎖が問題となっていました。
ところが近年では、都会の医師までもが足りなくなっており、都会の産科・産婦人科病院までもが閉鎖される動きが出てきています。
そのため妊婦が産婦人科を受診して検診を受けたりお産をしようと思っても、その施設が見つからないという問題が発生しているのです。
このような状況が続いていけば、少子化にさらに拍車がかかってしまうことでしょう。
産科・産婦人科医減少への対策
産科・産婦人科の医師不足を防ぐため、国は「医療機関の実態調査」や「離職した医師の復職支援」といった対策に取り組んでいます。
そして「日本産科婦人科学会」も以下のような行動計画を公表しています。
・都道府県の「総合周産期母子医療センター」に常勤の産婦人科医を20人以上集めて高リスクの出産や難しい新生児医療を行う
・地域の「地域周産期母子医療センター」に常勤の産婦人科医を10人以上集めて高度な産科医療を行う
・主治医制を廃止することで交代勤務を促したり病院内保育所の設置を促進する
「産科・産婦人科の医師不足の解消」は、国の将来に関わる重要な課題となっているのです。