コメディカルスタッフが充実しているかどうか・・先生方の負担度合に影響のあるポイントだと思います。転職先の判断基準の1つとしてお考えいただいてはいかがでしょうか。
コメディカルの多い病院
近年よく使われる医療用語のひとつに「チーム医療」という言葉があります。従来の医療体制では、医師が中心となって各コメディカルスタッフがそれぞれの分野における分業で患者の治療にあたるというスタイルが取られていましたが、医療技術の高度専門化が進むにつれ従来のスタイルでは医師ひとりの負担が大きくなり過ぎる点や、また患者の満足度を高めるためにも複数の医療専門職が連携して治療にあたるべきと考えられるようになり、それを具体化したものが「チーム医療」という概念です。厚生労働省の「チーム医療推進会議」を中心にチーム医療に関する検討が行われ、普及も進んできました。チーム医療では内科と外科など診療科の壁も取り払われ、患者を中心に全医療専門職がチームとして治療やケアにあたることになっています。
コメディカルスタッフが充実している医療現場では医師の負担も軽くなり、それだけひとりひとりの患者に集中する余裕が持てます。また最新の論文などに目を通す時間的余裕も生まれ、結果的に医療のクオリティを高め、医師としてのスキルを高めることができます。
がん医療におけるチーム医療
チーム医療は特定の診療科に限らず幅広く導入が進められている概念ですが、その顕著な例ががん医療です。ご存知の通り近年のがん医療は粒子線治療や分子標的薬など最新のさまざまな角度からの技術が投入されています。以前のように「外科手術か放射線治療か抗がん剤か」といったような単純な選択肢ではなく、各分野の専門医、専門看護師、細胞検査士、診療放射線技師などがチームとなって集学的治療が行われるのが一般的です。
コメディカルが充実していればいるほど治療の選択肢も広がり、医師はチームの総指揮官として冷静に事態に即応できます。今後はさらに免疫細胞治療、遺伝子治療等の次世代医療の臨床投入が予想され、医師の勉強量は加速度的に増加するものと思われます。そうした医師をサポートするのが優秀なコメディカルスタッフによるチームなのです。また直接的な治療の他にも「緩和ケア」「栄養サポート」「感染制御」「医療安全管理」といったさまざまな側面から治療・ケアのクオリティを高めるための支援が必要です。
コメディカルスタッフの質が患者を救う
Agency for Healthcare Research and Quality(米国医療品質研究調査機構)の報告によれば、医療施設におけるコメディカルの人員数と患者死亡率は反比例の関係にあります。また学士や修士を持つ看護師の割合が高まるほど患者死亡率及び重症合併症患者死亡率が下がる傾向にあります。つまりコメディカルスタッフの充実度は医療の充実度と直結していると言えます。もともと日本は欧米に比べ医療現場における看護師をはじめとするコメディカルスタッフの質・量ともに不足しています。要するに「現場が忙し過ぎる」のです。
コメディカルスタッフが不足している病院では医師も雑事に追われ、結果として治療や勉強がおろそかになる恐れがあります。転職に際してはコメディカルスタッフの数的・質的な充実度も非常に重要な判断要素となるのではないでしょうか。