今や個人情報の保護は企業・団体にとって不可欠で、漏洩が一度でもあれば信用を失墜させることにつながります。
これは医療機関でも例外はありません。
そのため、日本でもマイナンバー制度を用いて個人情報の管理を簡素に、そして精度を高めようと導入の準備が進んでいます。
しかし、マイナンバーによって新たな懸念が噴出していることも確かです。
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は11月19日に「医療等IDに関わる法制度整備等に関する三師会声明」を発表しました。
これによって、マイナンバーとは異なる医療IDが必要なことと、個人番号カードへの健康保険証の機能の取り込みに対しての反対を表明しています。
マイナンバー制度と問題点
マイナンバー制度とは「国民総番号制」のことで、政府が国民一人一人に番号を付与して個人情報を管理しやすくする制度を指すものです。
2013年の5月にマイナンバー法が成立し、2016年1月からの利用が決定しています。
三師会はマイナンバーが複数施設、多職種が関係する地域医療、介護の連携で活用されることは効率的であるとする一方、医療記録として名寄せ可能
であるとの懸念もあると発表。
つまり、マイナンバーによって過去から現在治療中の病気、死後に至るまでをひも付けできるという点を
問題にあげています。
医療ID導入の必要性
国民が必要な際に
「病歴の消去」「番号の変更」が担保されるように議論する必要がある
と表明しています。
また、個人番号カードに健康保険証の機能を取り込むことを政府が検討していますが、これに関しても
「プライバシー性の高い情報である患者の病歴が、個人番号とひも付く危険性が高い」
と示唆。
医療現場での個人番号カードの使用は適切ではなく、三師会は医療情報の特異性を考慮し、マイナンバーとは異なる
医療等のIDの必要性を主張しています。
その他の指摘
三師会の主張はIDの必要性を説くものだけでありません。
現在の法律では医療従事者に守秘義務があり、これを破れば懲役・罰金を科されるのですが、個人情報保護法においては
事業者への行政処分
の罰則に留まります。
それにも関わらず、医療従事者と同様に医療情報を取り扱う事業も多く存在することは矛盾であるとし、個人情報保護法改正案に
「医療情報に関する特例の指定をすべき」
としました。
これに関連し、医療以外の異業種企業が行っている遺伝子情報の収集・解析は人権侵害、差別に値する
ため、
集積や二次利用に制限を加える形の法改正を求めています。
また、現在の個人情報保護法では対象外となっている死者に関する情報についても言及し、
死者や遺族の尊厳について法改正時に考慮するように要請しました。
医療現場に従事しなければ見えてこない「保護すべき個人情報」を知らせる意味でも、今回の三師会による声明発表は重要だったと言えるでしょう。
政府の反応とこれからの動向に注目が集まります。