近年、実際に施術を行う「手術支援ロボット(da vinci surgical system=通称ダビンチ)」の発達と普及が著しく進んでいます。
医師の不足や高齢化社会が問題視される中で、より精密な動作を行える医療ロボットの登場は世の中の人々に希望を与えたことでしょう。
少しずつ世界の医療現場に導入されているダビンチは、一体どんなもので今後どう動きを見せていくのか、世界が注目しています。
手術支援ロボット、ダビンチとは
ダビンチとは、外科医の内視鏡遠隔操作によって患者に直接施術を行う手術支援ロボットのこと。
機械ならではの正確さと、手術器具の小ささ・細さを利用してより繊細で確実な施術技術を期待されています。
人間が必要とする集中力を必要としないロボットならではの安定性が高く評価され、医療現場への導入が促されている機械です。
医師の技術も向上させる、手術支援ロボットの進化
日本は、ダビンチの導入台数が世界2位。
前立腺がんの摘出手術を中心に導入されています。
正確で安定しているダビンチの技術は高く評価され、胃がん手術にも適応されるなど対象疾患も広がっている先進医療技術です。
カリフォルニア大学デイビス校の心臓外科医であるDouglas Boydさんは、「外科医の動きをデジタル化したこのツールによって、より腕の良い外科医が出てくる」と話しています。
医師の技術を忠実に再現し、集中力の切れないロボットのダビンチ。
医師がダビンチの技術を研究して技術の向上を図り、ロボットに負けないと腕を磨くという意識を持つことは医学の進歩に大きく繋がるでしょう。
保険適応の壁、伸び悩む症例数。
ダビンチの導入台数は2位ですが、症例数は世界5位。
医師の治療への信頼が根強い日本では、「やはり医師の手が良い」と感じる人も少なくないそうです。
しかし、信頼している医師が認める手術支援ロボットであるダビンチなのに、少し症例数が少なすぎると感じませんか。
一番の問題は、保険適応が進んでいないことです。
現時点では前立腺全摘出手術に限られているので、ダビンチを使用した手術を受けたいと希望する患者でも、手術費用の壁が大きく立ち塞がってしまうのです。
今後は社会にも普及し、当たり前の医療法として手術支援ロボットが活躍していくと医療業界は予測しています。
人材育成に力を。ロボットと外科医の共存はできるのか。
システムエラーも少ないダビンチは、困難を極める手術にも適応を目視されています。
しかし、正確で的確な施術を施せる機械であっても操作する技術者の腕が劣っていれば最善は尽くせません。
日本の医療業界は現在、若手医師を中心とした外科医全体の人材教育に力を注ごうとしています。
資格制度やトレーニング受講が日本全体で取り組まれる日もそう遠くはないでしょう。
手術支援ロボットvs外科医という視点ではなく、最善の治療法として共存していける姿勢こそ、ダビンチを浸透させる近道と言えます。
・ダビンチの進化と未来
米Intuitive Surgical社のDave Rosaさんは、ダビンチには大きく分けて4つの方向性があると話しています。
【1】 システム構成の刷新
【2】 手術器具の革新
【3】 撮像、表示技術の進化
【4】 シミュレーションや解析技術の活用
まだまだ改良や他の方面への進出も期待されているダビンチ。
近い将来、手術支援ロボットとは別の呼び名で呼ばれる日も来るかも知れません。
まだまだ多くの問題が残る医療業界。
今ある技術を残しながら新しいものを摂り入れようとするスタンスは揺るぎません。
医師達が前を向いている限り、より安全で確実な医療法を確立できる可能性は大いにあると言えるでしょう。