医師不足が囁かれている昨今ですが、診療科によって深刻度が大きく異なります。
数ある診療科の中でも特に深刻なのが産科医です。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医の発表によると、岩手、福島などの12県で若手産科医が特に不足している状態だということが分かりました。
現状のままだと将来の医師不足を拡大させる可能性が大いにあると言えるでしょう。
深刻な産科医不足、緊急対応が不可欠
今回特に若手産科医が少ないとされたのが岩手、福島、茨城、埼玉、新潟、岐阜、和歌山、山口、香川、愛媛、熊本、大分の12県。
2013年までの6年間で新たに産科医となった医師と人口を比較したデータの中で特に産科医不足が深刻だと考えられています。
今回の発表では抜本的な対策が不可欠とし、いくつかの提言をしました。
まず、危険性の高い出産を担当する総合周産期母子医療センターなどを統合・大規模化し、統合センターでは1施設当たり20人以上の医師を常勤させること。
そして2つ目は、24時間体制の医療を維持しつつ、医師の離職を防ぐために医師の増員で勤務環境の改善を図る必要があるということ。
問題に目を向けなければ産科医不足は増加していく一方で、新たな産科医育成も難しくなります。産科医問題は急務だと言えるでしょう。
産科医の地域格差
若手産科医の減少は、特にこの12件で顕在化しているだけであって、限定的な問題ではありません。
日本産婦人科医と研究者で10年後の2024年に産科医の数がどのようにかわっていくかの試算を行ったところ、26府県で減少すると予測されています。
この試算によると、産科医の絶対数が減少するわけではありません。産科医の人数は現在全国で9702人。
10年後には7%増加され、1376人になると予測されました。
しかし、東京都や大阪府など都市圏での増加ばかりで、10年後は医師不足の「格差」が生まれてしまいます。
特に産科医の減少率が高く予想されているのは石川県で、93人から69人へと25.8%も減少すると現状から予測されました。
現状が続くと、妊娠・出産の環境を整わせようと、さらに医師が酷使され、離職が拡大することでしょう。
10年後に予測されている産科医の危機的状況を打破しようと動き始めることが当面の課題だと言えます。