医師不足が嘆かれる昨今、政府も数々の対策を行っていかなければなりません。
医学部新設も対策の1つで、仙台市にある東北薬科大では2016年の春に医学部を新たに新設しようと準備が進められています。
現在この動きとともに話題となっているのが、
千葉県成田市での医学部新設
です。
2013年9月に一度白紙となった構想ではありますが、2014年にふたたび
浮上しました。
しかし、この構想に
批判の声
が集まっているようです。
「内容が不十分」「医師過剰につながる」の声
日本医師会、日本医学会、全国医学部部長院長会議の3団体が会見を
開き、
医師養成数の過剰、構想の陳腐さを指摘した上で「反対」を
明言しています。
会見には9人が出席したのですが、まず医師養成数の問題が
あげられました。
2008年度から2015年度にかけて
年間の医師数は1509人増加
しています。
しかし、地域枠で入学した学生はまだ臨床現場に出てきておらず、「医師養成数は十分」と指摘。
また、
1976年には437人に1人の割合で医師になっていたのに対し、2014年では162人に1人
となっていることに
ついても警鐘を鳴らしています。
現状の医学部定員数でも2030年には132人に1人となるため、
医師過剰になりかねない
とのこと。
法科大学院のケース
法科大学院の現状
にも触れています。
今回の医学部同様、政府は2000年代前半に法科大学院設立構想を進めていきました。
これまでに次々と法科大学院が開学されてきたのですが、その中には司法試験・国家公務員1種試験などの難関資格に
実績が無い大学も。
政府は
「修了者の7~8割が合格できること」
を目標に構想を進めていき、多くの学生が法科大学院に流れ込むものの、大学のブランド力向上だけを目的とした法科大学院も多いため
新司法試験の合格者は見込みの約7割程度。
しかも、
合格者の割合は年々減少しています。
現在では法科大学院の9割が定員割れという状況で、
74校中20校が募集停止
に追いやられることに。
横倉会長は「医学部は法律系の大学よりも設備がきわめて重く、法科大学院のようにならないようにと申し上げたい」と話しています。
質の悪い医師が増加
日本医学会の高久会長は
「定員増加で医学生の質が低下傾向にあるというデータが出ている」
と指摘。
そして
「質の悪い医師が増えることは国民にとって幸せではない」
と言及しました。
定員増加ということはつまり、「チャンスが増える」ということ。
従来では試験で勝ち残れなかった学生でも光を手にすることができるかもしれません。
しかし、悪く言うと
「誰でも入れてしまう」
とも言えます。
少数精鋭とは言いませんが、医師としての自覚を芽生えさせるためには、入学時点である程度の規制は必要なの
でしょう。
現在の状況では成田市の医学部新設がどちらに転ぶか分かりませんが、過去のケースを考慮して慎重に計画を進めていってほしいものです。