先進国として最先端の医療技術においては世界をリードする成果を多く示している日本ですが、国民一人一人への医療サービス需給状況を見ると決して恵まれているとは言えません。
医師不足が社会問題化してから10年以上が経ち、医師不足解消の取り組みが教育機関、行政と共に進められている現在においても、土地や診療科目によっては地域医療そのものが崩壊の危機
に瀕しています。
いかにして健全な医療サービスを提供し続けるか、いかにして国民の健康を養うかに日本という国が
知恵を絞った結果として、阿部晋三首相を議長とする国家戦略特区諮問会議において一つの規制緩和策が
議論されました。
地方医療における外国人医師の受け入れの是非
日本全国の医師数をデータ化した時、特に医師数が危機的に不足している地域は地方に偏ります。
地方医療を支えるために外国人医師を受け入れてはどうかという議論にはいくつかの問題が壁となって、なかなか実施に踏み切れずにいるようです。
特に人員不足であると分かっている土地柄で、果たして日本語の運用に問題のある医師と利用患者の間をつなぐサポート体制を組めるでしょうか?
多大な労力を投入して受け入れた外国人医師が日本に定住してくれる可能性がどれだけあるのでしょうか?
リスクと期待の狭間で、病気抱える患者たちは今現在も地方で苦しんでいるのです。
外国人医師を無力化する言葉の壁
例え日本語が通じないとしても、医師としての専門技術や知識があれば診察は行えるのではないか、と思われるかもしれません。
例えば海外旅行などの際に外国人医師による診察を受けた経験をお持ちの患者の方ならばお分かりになるかと思いますが、言語が異なれば思考形態も何もかも違うのです。
診察で上手く意思疎通を行えないという事は、どこにどんな問題が起こっていて何を感じているかを伝えられないということです。
病気の診察は問診が中心となりますので、何らかの症状が数値として表れていたとしても
言葉が問題で正しい結論を導き出せない可能性も大いにあります。
この壁を超えるには外国人医師の育成段階で日本語教育を施す必要がありますが、
医療の専門用語を外国語で行ってきた医師にとっては大変な苦難となるでしょう。
日本の医師、対人口比でOECD平均との格差は0.62
この平均数値はOECD各国の人口千人に対する医師数を示したもので、平均値3.1人に対して日本は2.38人という開きがあります。
人口1000人に対して医師が3人なのか2人なのかで、医師1人当たりの負担がいかに大きく変わってくるかは明白でしょう。
こういった現状が現在の日本の医療制度を崩壊の淵に立たせ、今の医療を支える医師たちを追い詰めつつあります。
根本的に解決を目指すならばもちろん日本国内の医学部の定員を増加し、長期的なスパンでの医師数増加を行うべきなのかもしれません。
ただし、医学生が増加しつつある近年でも科目によっては医師数の減少は加速の度合いを強めています。
医師育成制度そのものを含めての早急な対応が必要でしょう。