2015年5月8日、サッカーのジェイリーグ1部に属するチーム、鹿島アントラーズ(以下鹿島)の本拠地である茨城県鹿嶋市のカシマスタジアムに、整形外科のクリニックが開院しました。
そもそもプロスポーツ選手を擁する鹿島を初めとしたクラブチームには、選手の身体を守るためのチームドクターが複数名所属しているものです。
この整形外科開設に至った計画の中には、チームドクターが診療に携わることで、地域の医師不足解消に貢献しようという目的があったのだとか。
プロスポーツ界では異例の取り組みとして、注目を集めています。
計画の発端となった茨城県の医師不足
厚生労働省が発表している統計資料に、日本の医師不足の現状を示すデータがあります。
以前は人口10万人当たりの医師登録数を単純に計測していましたが、現在ではなかなか改善の見られない医師不足問題の状況に精密に対応して行くために、よりきめ細やかな数値が導き出されるようになりました。
分野別医師数、地域別医師数、若手医師数、そして現役医師数。
今この時に診療できる医師がどれだけいるのかを示す数値が「現役医師数」の統計であり、現役医師数の絶対数、そして人口比の数値が低ければ低いほど、その地域の医療サービスは破綻の近いというわけです。
鹿島の所在である茨城県は、2012年の段階で最下位から2番目、現役医療従事者の絶対数は4914人、人口10万人当たり166.97人で、ランキングトップを記録した京都府の292.72人に対して100人以上の隔たりがあることが判ります。
茨城県より危機的な埼玉県の状況
茨城県の医師数はランキング最下位から2番目、つまり、茨城県よりも危機的状況に追い詰められている県があるのです。
それが埼玉県です。
2012年度のデータによると、この当時の現役医師絶対数は10688人で、人口10万人当たりは148.20人となります。
茨城県の場合は医師1人当たり約598人の患者を担当することになりますが、埼玉県の場合はさらに負担が大きく、約674人です。
埼玉県は近年再開発が進んで人口が増加傾向にありますので、現役医師がますます求められるようになるでしょう。
鹿島の取り組みはプロスポーツ業界から見れば非常に革新的です。
近隣住民や、良いスポーツドクターに巡り会えずに困っていたアマチュアスポーツ選手にとっては間違いなく支えになると思われます。
これは広い視野で見れば、小さな数字に過ぎないのかもしれません。
しかし、どのような変化も革新も、ひとつひとつの取り組みは小さなものです。
地道な改善の工夫なくして医師不足解消は成し得ないのではないでしょうか。
こうした取り組みは、現役医師、これから医師を目指す方々にとって、新しい働き方のモデルともなりそうです。