国民皆保険制度が1958年に始まった当時、日本の国内には様々な分野で「陸の孤島」と呼ばれる地域が散見されました。
医師数を増やし、病院を増やし、誰もが十分な医療サービスを受けられるようになる。
それが国民健康保険法の目指すところであり、夢だったのです。
空路、海路による輸送手段が進歩したことにより、ライフラインが完全にストップするケースはよほどの非常事態を除いて起こらなくなりました。
しかし、1982年に政府が医師数の制限に乗り出した結果、現在の医師不足という状況があります。
特に地方、離島などでは医師数も設備環境も整っておらず、なすすべもなく死を迎える方が少なくありません。
沖縄県では、今でも人口の1割近くが「何が起きても救助されない」のだそうです。
あきらめることなくこの過酷な土地で、1人でも多くの命を救おうと始まった取り組みをご紹介しましょう。
命を救える距離を伸ばせ!沖縄の地理を考える
沖縄県は本島と、周辺の離島で成り立っています。
人口の集中する本島ですら、北部へ深く進めば救急病院まで2時間もかかってしまい、搬送中に命を落とす患者が多かったのだとか。
救命率を上げるには搬送時間を短縮する他ないと考えた北部地区医師会病院の副医院長、小濱正博医師が、民間ヘリコプターを導入した救急ヘリチーム、MESHを2007年に設立しました。
沖縄本土のどこへでも、医師が15分以内に駆けつけられるようになったのです。
一時期は資金不足で運用中断の危機に立たされたそうですが、現在では有志の援助により運用が再開されています。
かつての2時間という搬送時間に比べれば格段の向上を見せたように思える沖縄の救急事情ですが、ヘリコプターの継続飛行距離は約50㎞。
離島までの距離約400㎞を考えると、とてもではありませんが十分とは言えないようです。
実際、いまだに離島地区では一切医療の加護を受けられず、見送られる命が後を絶ちません。
命を守る翼は400㎞の離島へ届くのか
医療の研究が日夜進められているように、現場の体制も需要に応じて変わっていくものなのでしょう。
小濵医師が新たに考え出したのは、全速力での航続距離1200㎞以上を誇るビーチクラフト社製6人乗り飛行機の運用です。
もちろん、予算の問題を考えれば今すぐに実現するプランではないのですが、もしもこの飛行機が運用できれば、沖縄県内全域の島々へ迅速に駆けつけ、これまであきらめるしかなかった命のひとつひとつを助けられるようになります。
沖縄県内の離島に暮らす住民、約14万人の命を助けるために、小濵医師は世界中に支援を呼びかけています。
医師免許を持つ皆様にとっては、これ以上ない最前線の現場となるのではないでしょうか。