アメリカのACGMEに教訓を得た新・専門医制度

アメリカのACGMEに教訓を得た新・専門医制度

アメリカにはACGMEという専門医制度があります。
専門医認定機構認可基準によって認定された24科目の医師を専門医と呼ぶのですが、この制度をベースにして、現在の日本における医師の技術不足を改善するための新専門医制度が提示されました。

2015年6月15日に行われた日本プライマリ・ケア連合学会学術大会において、東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター長
北村聖氏が発表した内容です。

10年後の医師不足及び偏在を解消する新・専門医制度

10年後の医師不足及び偏在を解消する新・専門医制度

日本でも2000年以降医学教育改革が推進されてきた背景がありますが、それでも「評価」に関しては試験を通じて行う部分が少なくありませんでした。

しかし、「試験による評価」が試験対策に走る医師の増加を後押しし、専門医制度の実質的な崩壊を導くだろうというのが、北村聖氏によって今回の新専門医制度が提示された理由です。

研修によるOJT、ベッドサイドを離れない医療技術の研鑽そのものが評価対象であるべきだ、
と言う同氏の主張がこの新専門医制度の成り立ちに反映されています。
ここで、アメリカのABMS認可専門医の項目を見てみましょう。

アメリカの認可専門医の種類(ABMS加盟年度)
眼科(1917年)
耳鼻咽喉科(1924年)
産婦人科(1930年)
皮膚科(1932年)
整形外科(1935年)
小児科(1935年)
精神神経科(1935年)
放射線科(1935年)
泌尿器科(1935年)
内科(1936年)
病理科(1936年)
外科(1937年)
脳神経外科(1940年)
麻酔科(1941年)
形成外科(1941年)
物療医学及びリハビリテーション科(1947年)
大腸肛門外科(1949年)
予防医学科(1949年)
家庭医学科(1969年)
アレルギー免疫科(1971年)
核医学科(1971年)
胸部外科(1971年)
救急医学科(1979年)
臨床遺伝学(1991年)

日本ではこれに倣った専門医養成システムを構築しようとしていますが、北村聖氏の講演を受けるフロアの中からはアメリカACGMEの問題点も指摘されました。
アメリカACGMEの場合は各専門医の定員は定められているものの、勤務場所はコントロールされていません。
現実問題として日本の医師偏在・地方における医師不足も2004年の専門医研修制度開始から加速しています。
勤務地の調整を行う仕組みの考慮がなければ、評価システムを変更したところで地域医療の崩壊は止められないのではないか。
シンポジウムに参加した医療関係医者によるこの懸念は実のあるもののように思えます。

10年後の医師不足及び偏在を解消する新・専門医制度

専門医制度の問題点はもう一つあります。
それは、専門医療に特化した医師を養成し、技術向上が推進される制度実施の結果として総合診療を専門とする医師が現在より不足する可能性です。

総合診療は各種専門医の資格でも行えるため、総合診療専門医の資格のみを取得するメリットは大きいとは言えません。

現実的に考えるとダブルライセンスの取得は、医師への負担が非常に大きくなると考えられます。
しかし、2017年度から新専門医制度が施行されれば医師はそれに従うほかありません。

「ダブルライセンス取得を可能にするかどうか」さえいまだに議論中ではありますが、実際の診療では総合診療の知識が求められるケースが少なくないでしょう。
制度設計上は総合診療専門医と各種専門医のダブルライセンス取得をある程度容易にするべく動いているようです。

これから医師として活躍して行く皆さんには、自分がどのような医師になりたいのか、どのように技術を研鑽して行くのかをより強く問われるようになるでしょう。

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