医師不足による地域医療崩壊の防波堤「地域枠」の課題

医師不足による地域医療崩壊の防波堤「地域枠」の課題

日本の医療を支える医師は残念ながら絶対数が不足しています。そこに医師偏在という要素が加わって、地域によっては医療制度崩壊の危機が叫ばれる状況になったのです。
この問題を解消に導く制度として期待されたのが医師養成における「地域枠」の運用でした。

医師養成における地域枠とは、卒業後に支援を受けた県で一定期間勤務することを条件に医学部の修学資金を貸与し、条件をクリアすることで貸与資金の返還義務を免除する制度です。

2007年以降この地域枠人員は急増しており、今後は新卒医師の2割弱を占めるようになるだろうと言われています。
地域枠によって養成される医師が増えれば地域医療にはそれだけ制度が貢献したということになるかもしれませんが、ある程度安定的に地域枠が運用されるようになった結果、とある課題が浮き彫りになりました。

地域枠の運用に見られる「地域差」


医師不足と共に問題視される医師の偏在と同じような数字の偏りが医学部の入学時点から見られることが判ったのです。

■出身要件の問題
・へき地勤務医増加のための枠組みに不安
へき地医療を支えるための枠組みとして、へき地出身者の人数を設定できることになっています。しかし、実際にへき地に限定した出身要件を定めている大学はわずか3枠で、旭川医科大学、三重大学、島根大学のみに過ぎません。
医師を必要としているへき地をカバーするためにはあまりにも心もとない数字です。

・偏在が医学部の時点から明確に存在する
医師必要数を確保するために運用されるのが地域枠のはずですが、この制度を取り入れている62大学148枠1305人の内、2割を6大学が占めています。
札幌医科大学、弘前大学、福島県立大学、旭川医科大学、山梨大学、三重大学はそれぞれ最も生徒の集まる学校であり、かつ医師数の豊富な地域です。
医師不足、医師偏在の解消を目的とする「地域枠」運用の目的との矛盾を正す改善を行う必要があるでしょう。

医師不足による地域医療崩壊の防波堤「地域枠」の課題

人口10万人当たりの医師数で日本全国の最下位から2番目に位置する茨城県の場合、12年末に実施された調査で175.7人という数字を示しています。全国平均が当時237.8人でしたので、大幅に平均値を下回っている状態です。
茨城県の医師不足は現在でも継続しており、10年後までに地域枠による353人の医師確保を計画していると言います。
2015年度には茨城県内で地域枠を卒業した第一期生4人が、同県で研修を開始しました。今のところ茨城県の新たな星は片手で足りてしまうほどの人数に過ぎませんが、制度の改善が実施されれば医師必要数に迫る可能性もあるはずです。

地域枠制度における実情に応じた改善に期待しつつ、今後の動向を見守って行きたいと思います。

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