救急車の有料化が検討されています。
この議論は2008年ごろから連綿と行われてきました。
賛否両論で結論が出ないのではと思われてきましたが、2015年のニュースリリースによると、財務省が実施に向けた検討を始めているようです。
救急車を1回呼ぶと3万円を徴収される、そんな時代がやってくるのかもしれません。
救急車の有料化に伴って、どのような影響が起こり得るのでしょうか。
救急車の有料化、そのメリットとデメリット
これまで救急車は無料が当たり前でした。
ですが、総務省発表によると平成26年度の救急車出動件数は598万2,849件で、前年比7万1,568件増加しています。
平成20年、21年の役468万件を境として急激な出動件数の上昇がみられ、歯止めが効かない状況です。
これに対応する救急医療機関は三次救急・救命救急センターと、二次救急・入院を要する救急医療施設、初期救急・休日夜間急患センターと在宅当番医なのですが、これらの施設数はおおむね増加傾向にあるとはいえ、救急車出動件数の増加速度には対応しきれていません。
救急車の出動が有料になれば、自力で病院へ行けるような軽度の患者からの出動要請件数は確かに減るでしょう。
しかし、本当に即時対応が必要な患者までもが救急要請をためらうようになってしまうという危険性もはらんでいます。
この問題を解決する方策として提唱されたのが、電話相談による初期判定「コールトリアージ」システムです。
トリアージは患者の状態を判定し、治療優先順位を決めることを意味します。
電話相談によってトリアージ判定を行い、その結果によっては救急車を呼ばない可能性もある訳です。
これは確かに、軽症患者の救急車利用を抑制できるでしょう。
ただし、コールトリアージにもまだいくつもの課題が残されており、救急車利用の一部有料化と共に現実化するにはクリアすべき壁が立ちはだかっている状況です。
救急医療の現状
平成18年から24年の救急各機関の施設数変遷を見ると、三次救急施設は189件から249件へと拡大、二次救急は3,214件から3,259件へ、初期救急は夜間急患センターが508件から556件、当番医制を取っている地区数は666から630へと、総合的な数字ではわずかながら増加しています。
急性期の患者に高度な医療ケアを施す三次救急施設数は確実に増えており、現実に即した救急医療体制を整えようという努力は成果を上げていると言えるでしょう。
しかし、患者が急性期を過ぎた際の受け手となる二次救急施設や、初期診断を行う夜間急患センターや、当番医制実施地区の数はほぼ横ばいです。
しかも、救急救命センター専従の医師数は施設によって差があり、39人と充実した体制を見せる施設もあれば、0人という地方も存在します。
人口100万人当たり2か所の救急救命センターの整備が目標として掲げられ、全体の数字では平成24年度には目標を達成したようです。
しかし施設ごとの偏在によって、設備があっても稼働しない、という事態が起こっているのです。
施設を増やすには医師増員が不可欠にも関わらず、既存の施設を充足させるだけの人員も確保できていません。
厚生労働省発表による最新の資料によると、救急科の専従医師常勤換算数は約2,610人で、求人医師数は計705.2人でした。
これはあくまで常勤換算の人数ですので、非常勤の求人件数を実数で数えれば倍近くに及ぶ可能性もあります。
いずれにしろ、救急医療センターの稼働率を上げなければ救急車の出動件数を抑えたとしても、重症患者が重なった時などには対応しきれないでしょう。
救急救命医の増員が急がれます。