日本の医師不足が問題視されて久しい昨今、特に地方では危機的な状況に陥っている地域が少なくありません。
長野県大町市立大町総合病院では、今年3月、産婦人科での分娩が休止されました。
産科医不足は同院のみの問題ではなく、県内全域で深刻な問題となっています。
こうした事態を打開する取り組みとして、信州大学は、「信州周産期医育成プロジェクト」の立ち上げを提案。
9月1日、長野県庁を訪れ、阿部守一知事にプロジェクト内容について説明し、財政面での支援を要請しました。
長野県での産科医不足の背景は?
2004年から始まった「新臨床研修医制度」は、地方の医師不足に拍車をかけるきっかけになったと言われています。
新制度では、新任医師に義務付けられた2年間の初期研修が大学病院以外でも可能になりました。
その結果、条件の良い都市部の一般病院に研修医が集中し、地方の大学病院などにおける医師不足が進むこととなったのです。
長野県でも、この問題の影響を大きく受けました。
研修医不足に加え、全国的な医師不足により県外から派遣されていた医師が呼び戻される事態も多発。
その数は新制度実施からの3年間で15人にも上りました。
こうした事態に長野県内では、各地域の産婦人科の中心となる役割を果たす9つの「連携強化病院」を選定、重点的に医師を配置することで対応してきました。
ところが、昨年頃から退職者の増加や女性産科医の産休などが重なり、各連携強化病院でも産科医が不足する事態となってしまったのです。
産科医は肉体的にハードで精神的な負担も大きいことから、志望する医学生や研修医が減少していることも産科医不足の背景となっています。
「信州周産期医育成プロジェクト」とは
こうした産科医不足を解消する取り組みとして信州大学が提案したのが「信州周産期医育成プロジェクト」です。
研修医も含め、信大病院で周産期医療に関わる医師を増やすことを目的とし、以下のような取り組みを行う計画です。
・信大病院の産科・小児科の研修プログラムに所属する研修医が対象となっている研修資金貸与制度の要件を緩和。
プログラム所属者以外でも周産期医療の研修を受ける研修医に対して研修資金を提供する。
・初期研修期間を終えた周産期医療専攻の若手医師に研修資金を提供する。
・医学生と専門医との交流機会を増やす。
・医師養成や出産に関わる問題について県民への理解を深める講習会などを開く
これらの取り組みには県の支援が必要になるため、信大の山沢清人学長、池田修一医学部長らが阿部知事と懇談を行い、プロジェクトへの支援を求めました。
阿部知事は、
「医師不足解消に向けて、やれることはなんでもやらなければいけない」
とし、プロジェクトへの支援に前向きに応じる姿勢を表明しました。