超高齢化と人口減少の時代が確実にやって来るという数値データが明らかになって以降、日本では医師不足解消のために医師およびメディカルスタッフの育成数増員の枠組みが考案され、実施されるようになりました。
しかし、医師不足の潮流は厳然として残っています。
このほど愛知県が発表したところによると、県内で医師不足を理由として診療制限を行う施設が72施設に上ったことが明らかになりました。
全体の22.4%に及ぶ施設が診療制限を実施しているという事実
愛知県内にある医療施設全体の内、22.4%にあたる72施設が何らかの診療制限を実施しています。
これは2015年6月のデータであり、年末にはさらに増加している可能性も否定できません。
理由は医師不足によって施設を稼働できない状況があるためで、診療科そのものの休止や、入院の休止、急患の受け入れ制限を行っている深刻な施設の割合が減りません。
その割合は診療制限を実施している72施設中半数以上の47施設あり、前年同期(同47施設)の状況が全く改善されていない現状が判ります。
診療科別で見ると診療制限をしている施設が最も多いのは内科、次いで整形外科、さらに小児科、精神科、産婦人科が横並びに医師不足の窮状をあらわしています。
施設の絶対数が少ない診療科ほど事態は切迫していると見て間違いないでしょう。
愛知県の医師不足解消への取り組みは2009年から始まっている
愛知県では2009年度より奨学金の返還を免除する「地域枠」の実施を始めています。
医学部の定員に地域枠を設置しているのは愛知医科大学、名古屋市立大学、名古屋大学、藤田保健衛生大学で構成される県内四大学です。
これによって県内の指定病院に勤める医師数の確保を目指していますが、地域枠を活用して育った医師が指定病院で務める義務を負うのは9年間までです。
研修期間2年間を含めての9年を県内で過ごせば、そこからは医師本人の自由意志によって進路は決定されます。
第一期生の5名が17年度に赴任する予定が立てられており、地域の担当者は「地域枠」による医師数増加への期待を明らかにしているようです。
「地域枠」の実行と効力の維持について
制度としての地域枠が始まったのは平成22年度のことで、制度を利用した医師は専門医が増えるのはこれから予定されている計画に過ぎません。
これまでにも地域枠と専門医制度の実施には多くの議論が交わされてきましたが、その中には間違いなく起こるであろう問題が含まれています。
医学部卒業後の研修期間2年間を除くと、県内に所属する義務を医師が負うのは7年間だけです。
つまり、地域枠制度には医師の永続的な確保の効用はないのです。
地域枠を活用する人員が増えれば流動的にではあってもある程度の医師数増加は見込めるかもしれません。
そもそも育成数の確保自体が確実でない点を念頭に置いて考えれば、援助して育てた人材を“いかに定着させるか”がこの地域枠制度の成否を分けることになるでしょう。
愛知県では地域枠によって育成した医師は優先的に過疎地に配置する予定だと表明しています。