日本の医師不足が大きな問題となり、その対策として医師臨床研修制度が導入されたのが平成16年度のことでした。
あれから12年目となる平成28年度、ようやく研修医の募集定員、そして内定実績において、成果と見られる傾向が明らかになったのです。
一例として目を引いたのが、直線距離では首都圏に近い土地でありながら、深刻な医師不足にあえいでいた新潟県の話題でしょう。
同県内にて平成28年春からの勤務が決まった研修医は過去最多の102人を記録したそうです。
新潟県のこれまでの募集定員と採用実績を見ると、前年比9人増加という数字は小さなものではありません。
4年ぶりに増加した研修医の定員
臨床研修医の募集定員は過去7年間に渡って減少を続けていました。
平成16年に11,030人だった募集定員は平成20年に過去最大の11,722人をマークしたものの翌年から如実に転落傾向に移り、平成21年に11,448人、翌平成22年には10,699人、
それから平成26年まで下降が止まらなかったのです。
研修医の希望が都市部に集中しすぎてマッチングが成立しなかったせいもあるでしょう。
現在でも都市部の枠が人気なのは変わりませんが、募集定員数11,000人を切り続けた平成22年から26年の失敗を糧に都道府県別の募集定員の見直しが行われました。
その結果、平成27年度、4年ぶりに日本全国を合わせた研修医の募集定員が増加に転じたわけです。
これまで医師臨床研修制度の受け入れ施設は臨床研修病院と大学病院で、指導体制などに大きな格差が生じていました。
研修病院に指定されていながら、実質的には研修医の指導にまで手が回らない施設が少なくなかったのです。
この問題を解消するために臨床研修病院の指定基準を強化したのが平成22年のことでした。
地域による人員配置の不平等を是正するだけでなく、臨床研修病院の指導力向上も同時に推進しています。
各県の研修医内定実績増加は、間違いなく医師不足に悩む地域に現れた明るい兆しと言えるでしょう。
前年比で内定者が増えた県のランキング
公式発表による内定者増加ランキングを見ると、冒頭でご紹介した新潟県は上位5位にもランクインしていません。
1位は鳥取県、2位秋田県、3位山口県、4位和歌山県、そして5位が奈良県でした。
最大で36.7%もの増加率を記録していますが、実数で数えると前年比11人。確かに増加率は1位であったのですが、問題は母数です。
平成26年度に30人だった内定者数が41人に増加した、その割合が36.7%なのです。
研修医の募集定員に対する応募数の少なさをご理解いただけるのではないでしょうか。
鳥取県の平成26年の募集定員は78人分枠があったにも関わらず、実際の内定者は半数にも及ばない33人でした。
この傾向は東北地方から始まり、全国的に顕著に見られます。
特に交通の便が悪い山間部や、海を挟んだ四国など、連絡や協力において不利と考えられる土地にはいまだに十分な医師が集まりません。
しかし、臨床研修機関の強化と各地の定員設定による配置是正が平成28年度のような明らかな成果を示し続ければ、やがて医師配置の地域間格差、ひいては医師不足にも改善の実感を得られるようになるでしょう。