近年、医師不足や医師の過重労働などが問題視されるようになっており、医師不足解消のために臨床研修医制度が導入されました。
2015年、臨床研修医の募集人数が4年ぶりに大きく伸び、採用人数が過去最高となったことが、厚生労働省によって発表され話題になっています。
これは、医師不足解消を狙った新臨床研修医制度の効果なのでしょうか。
今回は、臨床研修医募集の定員数増加と実際の採用数、都道府県別の動向についてご紹介します。
臨床研修医募集定員数が4年ぶりに増加!
近年日本でも問題視されていた医師不足解消のため、2004年度から新臨床研修医制度が導入されました。
これにより、臨床現場に立とうとする医師は、初期臨床研修を2年間以上の間受けることが必須になりました。
しかし、新制度運用においても、当初は研修医が都市部などに集中している、プログラムに柔軟性がないなどの指摘があったため、募集定員(都道府県別)に上限を設けたり、
小児科、産婦人科、精神科などに重点を置く内容のプログラムを認めるなどの工夫を重ねてきました。
これを受けて、2015年度から、新しく臨床研修医を募集する病院は全国で1,018カ所となり、昨年度の1,014カ所に比べて微増の状況でした。
そして、募集定員は、11,222人となり、昨年の10,703人よりも増加しました。
募集定員が増加したのは、4年ぶりになります。
このことは、医師不足解消を目指した新臨床研修医制度がその効果を表し始めているものと考えられます。
臨床研修医採用人数が過去最大に!
募集人数が4年ぶりに増加に転じた臨床研修医ですが、実際に2015年度に採用された研修医の採用人数も、大幅に増加しました。
2014年度までは、臨床研修医の採用人数は7,000人台でしたが、2015年度は8,244人となり、過去最多の人数となっています。
このことは、文部科学省と厚労省による「地域の医師確保対策2012」に基づいて、医学部の定員が増えたことによる影響があると考えられています。
「確保対策2012」においては、今後も2019年度まで医学部の定員を増やし続けることになっているので、研修医の採用人数も同じように増加することが期待されます。
都市部よりも地方に分散する傾向がある
今回の臨床研修医の募集定員増や採用人数増に関連して、実際の人数増加は都市部よりも地方に分散する傾向にあります。
たとえば、募集定員の割合を見てみると、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡の大都市の6都府県以外の道県においては、募集定員の割合は、63.4%となっており、
昨年度の61.7%を上回って2014年度の新制度導入以来最高となっています。
採用割合で見ても、上記6都府県以外の道県では採用割合も増加しており、2015年度は56.4%となって、やはり過去最高を記録しました。
反対に、上記都市部の6都府県においては、2015年度は43.6%であり新制度実施前の2003年度の51.3%と比べると、12年間で7.7ポイント低下していることがわかります。
このように、臨床研修医はその定員数も採用人数も増加していますが、その内容は、都市部よりも地方部に分散する傾向にあると言えます。