
先日、聖マリアンナ医科大学病院において精神保健指定医資格の不正取得があったことが判明し、厚生労働省が同病院医師の指定医資格を取り消しました。
この事件は、重度の精神病を患う患者の関係者らを中心として非常に大きな波紋をもたらしています。
そして、不正取得が起こった背景には精神保健指定医の不足問題があるとも指摘されています。
精神保健指定医とはどのような仕事をしており、その実情はどのようなものになっているのでしょうか。
今回は、聖マリアンナ医科大学病院における指定医資格不正取得問題から、精神保健指定医の医師不足問題を見てみます。
聖マリアンナ医科大学病院における資格不正取得
聖マリアンナ医科大学病院では、20人の医師が精神保健指定医資格を不正取得したとして指定医資格を取り消されました。
処分を受けた医師のうち11人は、自分自身では、患者の診断や治療に十分関与していないにもかかわらず、治療に関わったという虚偽の内容の報告書を提出しました。
他の9人は指定を受けた医師らの指導医であり、11人の作成による上記虚偽報告書について、その11人が実際に患者の治療を担当したかどうか確認しないまま署名したとの理由で処分を受けました。
処分を下した厚生労働省によると、今年1月下旬に、聖マリアンナ医科大学病院の医師が提出した報告書が、同病院の別の医師の報告書の内容に酷似していることに気づき、
病院内に保管されていた5年分のカルテの記載内容を確認してつき合わせる調査を行いました。
そして、11人の指定医による不正を確認したということです。
厚生労働省は、同病院内に立ち入り検査も行っています。
病院側は「組織的な行為ではない」と弁明している状況です。
不正取得の背景には精神保健指定医不足がある?

聖マリアンナ医科大学病院において精神保健指定医資格の不正取得問題が発覚したことによって、重度の精神病を患う患者家族や関係者などは、大きな不安を感じています。
もっとも信頼すべき医師がこのような信頼を失う行為をしたのですから当然でしょう。
ただ、このような不正があった背景には、深刻な精神保健指定医不足があると言われています。
大病院で働く精神保健医は、重度の精神病患者を診ないといけません。暴れたり自殺衝動がある患者なども多く、どうしても激務となりがちです。
そこで、精神保健医の多くは、こうしたストレスを避けて小さなクリニックなどに勤務する例が多いといいます。
大病院ではどうしても精神保健指定医が不足する現状があると指摘されており、このことも今回の不正問題の一因となっていると言われています。
もちろん、医師不足があるからといって不正をしても良いと言うことにならないのは当然です。
しかし、今回の不正問題を教訓として、今後の大病院での精神保健医の待遇などを見直し、現状の精神保健医不足問題を解消していく工夫をはかることが大切だと言えるでしょう。