近年医療の世界では医師不足と言われていますが、そんな中で看護師の実力を底上げし、スキルアップすることによって医療の質を高めようという動きが高まっています。
今回は医師不足の現状を補完する効果も期待されている、看護師の実力を底上げするための取り組みをご紹介します。
データベース「ディンクル」の活用
2015年夏、病院内における医療ミスや院内感染などの情報を集約して、項目ごとにまとめた総合データベースが始動しました。
このデータベースは「ディンクル」と呼ばれ、現在全国から約500の病院が参加しています。
ディンクルでは事故につながりかねない事例や患者の転倒・転落の発生率、院内感染、看護師の労働時間など8分野136項目に答えを入力し、
その結果を表やグラフで確認することができます。
これを利用すれば、たとえば「事故につながりかねない事例がほかの病院よりも多い」「認定看護師数がほかの病院より少ない」などといった自分の病院の弱点を把握し、
その点を強化していく取り組みに繋げていくことができるのです。
このようにディンクルのデータベースは、看護師の実力アップの底上げに活用されています。
参加病院が自分の病院の全国での立ち位置を知るためのシステムが、ディンクルなのです。
研修制度や認定資格の充実
看護師の実力アップの動きには、2015年10月に国が始めた「特定行為研修制度」もあります。
この研修を修了した看護師は、点滴の調整や気管チューブの挿管など、高い専門性を持った医療行為38種類を医師の手順書によって実施することが可能になります。
看護系学校の大学院の修士課程では「専門看護師」の資格を取得することができます。
専門看護師の資格を取得するための課程では「実践」のほかに「倫理調整」「相談」「教育」「研究」「調整」の6つの能力を育てることができます。
また日本看護協会が認める機関で6か月間研修を受けることによって得られる「認定看護師」という資格もあります。
認定看護師は「実践」「相談」「教育」の3つの能力を学んだ上で、取得するものとなっています。
潜在看護師の復職支援
看護師の実力を底上げするために看護師の復職支援も行われています。
現在、資格を持っていても職を離れている「潜在看護師」が、日本中に約71万人いるといわれています。
そこでこの10月から厚生労働省が主体となって、離職の際には努力義務として都道府県ナースセンターに届け出る制度を導入するとともに、
研修や交流会の情報提供などを通じて看護師への復帰を支援する動きが起こっているのです。
さらに全国各地の多数の団体が、復職支援のためセミナーなどを開催していて、そこに復職を希望する看護師が参加できるようになっています。