2015年11月24日に経済財政諮問会議が開かれ、財務相の諮問機関である「財政制度等審議会」が麻生太郎財務相に対し、2016年の社会保障費に関する意見書を提出しました。
そこでは夏における予算概算要求時の6,700億円の増加要求から、約1,600億円も削減された5,000億円弱へと増加要求が抑え込まれています。
このように高齢化社会にともなう社会保障費の増加分が抑え込まれることによって、医療業界にはどのような影響がおよぶのでしょうか。
今回は2016年度社会保障費抑制が医療業界に与える影響について考えてみたいと思います。
2016年度予算建議(意見書)の内容
近年、高齢化社会によって社会保障費の増加が問題となっており、今後その流れはますます加速していく予測が立てられています。
しかし2016年度予算建議(意見書)においては、予算概算要求時よりも社会保障費が大きく削られたのです。
もともと社会保障費の自然増加分として、2016年の予算概算要求時には6,700億円の増加が盛り込まれていました。
しかし11月24日に行われた経済財政諮問会議では、そこから約1,600億円を削り込んだ5,000億円弱という数字に変わっており、実際にその内容で建議が提出されたのです。
安倍政権は今年6月の「財政健全化計画」において、今後の高齢化社会対策のために社会保障費を抑えようとする方針を掲げ、
2016年度からの3年間における社会保障費の増加分を約1.5兆円に抑えることを視野に入れています。
今回の予算建議ではこれを受けて、社会保障費抑制を先延ばしせずに実施していく内容となっているようです。
診療報酬がカットされる可能性が高い
社会保障費は医療や介護に充てられる予算なので、2016年度予算における社会保障費増加分が約1,600億円削減されたことによって、医師の診療報酬が削減されることが予測されます。
具体的には以前から問題となっている「7対1入院基本料」や「療養病床入院基本料」の引き下げが主に検討されています。
これらについては2014年にも改定がありましたが、さらに大幅な削減が求められる可能性が高くなっているのです。
また薬価についても、後発医薬品の価格は先発医薬品の半額とし、特許の切れた医薬品の価格を大胆に引き下げることも視野に入れています。
このように社会保障費が削られることによって、医師の診療報酬を始めとして医療業界に多大な影響がおよぶことになるのです。
マイナス改定はどうなる?
社会保障費の削減は医師の診療報酬に大きな影響を与えることになるため、もしこのマイナス改定が強行されれば医師不足が進み、2006年に起きた「医療崩壊」の二の舞になってしまうかもしれません。
このマイナス改定された意見書がどのように扱われるかが、今後の医療業界を左右すると言っても過言ではないでしょう。