高齢化の進む昨今、高齢者が要介護状態や認知症となっても、住み慣れた地域でQOLを保ちながら老後を送るためには、地域包括システムの構築が不可欠です。
そこには当然、身近な「かかりつけ医」などの医療との連携も必要ですが、医師不足という重大な壁がそれを阻もうとしています。
ここでは、その実態について詳しくみていきたいと思います。
在宅医療を重視した「かかりつけ医」増加への取組み
2016年の診療報酬改定は、在宅医療への支援が強化される内容となっています。
特に認知症患者や、小児を継続して診ることに対する報酬が引き上げられています。
また、患者の状態や内服を把握・管理する、かかりつけの薬剤師を持つことも推奨されているようです。
とはいえ、在宅医療に取り組む医師は24時間対応を求められ、最期の看取りや対応などに手間と時間を取られることが多く、かかりつけ医がなかなか増えないというのが現状です。
かかりつけ医ともなれば、地域の様子から患者の日常生活まで、さまざまな事情を把握しておく必要があり、その上で幅広い分野の診察をしていかなければなりません。
その後、必要であれば専門医の紹介や介護サービスとの連携を図らなければならず、報酬が増えたからといって在宅医療に取り組む医師が増えるとは考え難いところです。
厚生労働省は、このような「かかりつけ医」を増やすために、2017年度より総合診療が可能な医師の育成を始めますが、それには3年かかる見込みなので、実現はまだ先の話となっています。
医師不足と地域医療の現状
かかりつけ医の役割は、主に診療所の医師が担うことが多くなっていますが、診療所を開業する医師の数は伸び悩んでおり、特に医師不足の深刻な地域では新規開業自体がほとんどありません。
そのため、増加する死亡数に対し看取る医師数が足りていないのが現状です。
さらに、患者側からは「かかりつけ医」をどこでどのように見つければよいのか、といった情報が得られにくいという事情もあります。
特に医師不足による医療崩壊の危機が叫ばれる千葉県では、このような問題に対して積極的な取組みが行われています。
まずは現状を徹底的に調査してから医療を提供する体制を整えます。
在宅医療に関しては、関係医療機関が分かりやすいよう一覧を作成します。
地域医療連携の手順を決定・実行することで、患者が適切な医療を受けられるような仕組みを構築します。
このように限られた医療資源をうまく活用することにより、地域医療の再生を目指しているのです。
かかりつけ医の役割を担う開業医は、自院の経営だけでなく、地域住民の健康に対しても大きな責任と義務を背負っています。
そのような医師が不足することは、地域包括ケアシステム自体が成り立たなくなる危機的な状況です。
高齢化社会が進む中、医師不足解消に向けては、さらなる打開策が求められていくことでしょう。