東京都新宿区にある独立行政法人国立国際医療研究センターは、医師臨床研修マッチングのランキングで人気の病院として研修医から高い支持を受けています。
非常に人気の高い同センターが、来年4月研修開始の初期研修医の募集定員を今までの45人から34人へと大幅に減少させ、選考方法を大きく見直しました。
今回の改正にはどのような意図があるのでしょうか。
ブランド化
国際医療研究センターの副院長で、医療教育部門長の大西真氏によると、研修医削減は「病院のブランド化」を憂慮したものだと説明しています。
入るのが難しい臨床研修病院での研修はキャリアとして有効なため、研修医からの人気は絶えないものの、同センターへの帰属意識が希薄な研修医が増加傾向にある
のも否めません。
初期研修終了後、以前までは約半数が同センターに残っていたのに対し、2014年は約3割に減少。
これは、同センターだけの現象ではなく、他の病院でも同様の声があります。
研修医の中には大学医局に所属したほうが効率的にキャリアアップできると考え、研修終了後大学医局へ向かう研修医が増加しているのです。
少数精鋭
もちろん定員削減はこれだけが原因ではありません。
研修医は症例数の多さ、多様さに惹かれて国際医療研究センターに応募するのですが、より多くの症例・手技を経験したいという声も上がっていました。
それを実現させるためには研修医が多すぎるのが現状で、専門医制度の開始にも備えて、研修医の募集定員を減らし、少数精鋭主義にシフトすることを決めたようです。
選考の見直し
国際医療研究センターは2014年度から初期研修医の募集を減らすとともに、選考方法の見直しも行いました。
見直しのポイントは2つです。
まず、1次選考となる書類審査(履歴書、エントリーシート)での「足切り」が実施されたこと。
2014年度は選考に178人の応募があったのですが、書類審査で122人にまで絞り込みました。
そして、面接方法に大きな変更があります。
従来では応募者と面接官それぞれ6人ずつで行われる「幹部面接」と、12人の医師が5分ずつ面接する「個別面接」
で
構成され、この個別面接が最終的な合否を決定するものです。
個別面接の結果、医師がマッチングの希望順位表を作成するのですが、この方法だと公平性が保てないという危惧もありました。
例えば臨床実習に来て自分が面倒を見ていた学生相手などの場合だと、医師の恣意的な判断で合否が決まってしまう可能性も否定できません。
見直し後は、個別面接を廃止、幹部面接の内容が変更になりました。
変更点は、6人の面接官を病院幹部だけではなく、内科系、外科系、精神科医師、看護師を入れること。
これによって多角的かつ公平性の高い面接体制を確立させようというものです。
結果として、2014年度の人気ランキングの中間公表では前年度1位から4位に後退した国際医療研究センター。
しかし、重要なのは量ではなく質。
優秀な人材を今まで以上に定着させるには、制度の見直しが不可欠です。
この結果は改革が前進していることの表れだと考えてよいでしょう。