先生方の転職先としての観点からみたクリニック(診療所)と病院の違いをご紹介いたします。
クリニックか病院か
医師が転職を検討する際、転職先としてはクリニックや医院などの小規模な診療所か、あるいは病床数が
20を超える病院か迷われることも多いと思います。
ご家庭をお持ちの女医の先生などはご家族のことを
考え、時間的余裕を持ちやすいクリニックを選ばれることも多いようです。またこのケースでは非常勤という働き方も大きな選択肢のひとつとなります。
さて、転職先の施設の規模は働き方やキャリアにどのような影響を受けるのでしょうか。
大病院や総合病院の場合は外来も多く、医師も多忙になる傾向があります。また病床数が多ければ診療科によっては当直も必要とされるケースが少なくありません。しかし多様な状況の患者さんが来院されるため、臨床医としての技術を磨くという点では恵まれています。また状況によっては病院内での昇進も望めます。
一方クリニックなどの場合、「難しい手術が必要な場合は大病院へ紹介」といった制限を設けているケースが多く、特定の専門分野の技術や知識は磨かれますが、それ以外の分野での成長が望めないといったことも考えられます。
ただしクリニックの場合は院長先生のキャリアや方針によって医療施設としての性格がまったく異なりますので一概には言えません。あくまでも上記は一般論として受け止めていただければと思います。
クリニックの特性にご注意を
クリニックの場合、医療的な特性の他に経営的な特性も多岐にわたっています。たとえば企業検診や人間ドックなど産業医としての活動が主で、外来はほんの数%といったようなクリニックも存在します。こういうクリニックでは予防医学が中心となり、臨床医としてのスキルを役立てられる場面が少なくなるかもしれません。
その反面、患者に追われることがなく時間的にも余裕を持って研究や論文に打ち込みやすいという傾向も見受けられます。また、クリニックでは医師の数が限られているため、対人的なコミュニケーションスキルも非常に重要となってきます。患者さんひとりひとりに明るく親身に接し、クリニックとの信頼関係を築くことによってリピーターを養成し、またそこから口コミが広がって多くの患者さんをご紹介いただける。特に小規模なクリニックではそうした地域密着型の「営業力」が重要になってきます。どちらかというと学者肌の朴訥なお人柄の先生よりは気さくでオープンな性格の先生の方が向いているかもしれません。
カルチャーショック
特に大学病院などに勤務なさっておられた先生が小規模のクリニックに移ると、何もかも大学病院とやりかたが異なっていてカルチャーショックを感じる場合があります。器具の扱い方が簡略化されていたり、検査や治療の際の手続きが省略されていたりといった「常識の違い」です。
クリニックは少ない人数で適正な利益をあげてゆかなくてはならないという制限があり、なにもかも教科書通りにはやっていられないという現実があります。もちろん衛生上などの問題がある場合は指摘して改善してもらわなくてはなりませんが、「郷に入れば郷に従え」の言葉通り、ある程度は目をつぶる度量も必要となってきます。
将来の開業のために
将来開業を考えておられる先生には、「自分が開業するとしたらこの程度の規模」というサイズのクリニックで勤務してみると良い経験となるのではないでしょうか。どの程度経営にタッチできるかはわかりませんが、「こういう立地だとこれぐらいの患者さんがくるのだな」とか「どのような客層をメインターゲットにすべきか」などの他、患者さんへの応対姿勢や多くの患者さんを誘導するためのサービスのポイントを多く学ぶことができるはずです。