日本には有人離島や僻地と指定されている場所がどれほどあるかご存知でしょうか。
平成22年国勢調査によると有人島数は418島あります。これらの離島を含む僻地とよばれる「無医地区」や「僻地診療所があるエリア」は全国で約800カ所あるといわれています。これらの僻地医療の現状はどのようになっているのでしょうか。また、どのような医療課題があるのでしょうか。この章では、離島を含む僻地医療の現状についてご紹介いたします。
まず、現在の僻地医療の特徴を3つに集約すると「医師の不在・不足」「施設の運営・設備費の不足」「医療施設への運搬」をあげることができます。僻地医療の現場では、医師不足や不在という状況に対して医師派遣を実施していますが、それでも足りていないというのが現状です。また単純に数だけの問題ではなく、一人の医師が様々な科目の患者を診る必要があり、僻地医療を担う医師はプライマリケア医師として質も問われ始めています。その上人口の少ないエリアのため診療所の運営費用をまかなえず、必要な医療設備も整っていない診療所も多く存在します。この状況を打破するために行政から補助金の付与を行っているエリアもあります。救急の対応が必要になった場合は、救急医療を受けられる施設へスピーディに搬送する必要もあり、特に離島の場合はドクターヘリとの連携が必要不可欠です。
このように僻地を取り巻く環境は、単に僻地診療所だけで完結するものではなく行政や総合病院との連携が必要です。都心では当たり前すぎて意識さえしていなかった環境設備がないということも、僻地医療では日常茶飯事なのです。このギャップを意識しないまま勢いだけで離島や僻地医療に身を投じてみた結果、予想と現実があまりに違うことで早期退職してしまい、かえって地域医療の足を引っ張ってしまうということがないように事前の情報収集が大切になります。一方で、僻地に住む方々は藁をもつかむ思いで過ごされていますので、僻地医療に携わるやりがいはひとしお。都心では味わえない患者さんや地域の方々とのふれあいは僻地医療ならではの魅力と言えます。
離島や僻地医療の求人というと、まさに無医地区に居住を構えてじっくり地域の方々と向き合うという方法がフォーカスされがちですが、その他にも「僻地医療拠点病院」に転職するという方法があります。僻地医療拠点病院とは、僻地エリアへ巡回医療を行ったり、医師の派遣、僻地医療に従事されている方々の教育・研修、遠隔診療などを実施されている僻地医療を影で支える病院です。このような病院は、行政から施設整備や設備費、また運営費といった費用の補助対象となっており、経営状況も安定している点も特徴の1つです。僻地医療拠点病院は全国に約270施設あり、このような施設と連携を行っている僻地診療所は約1000カ所あります。どちらの医療機関で働くかによって、提供できる医療の形や患者さんとの接し方が違ってきますので、その違いを認識した上でご自身の提供したい形に合う施設で医師求人を探すことが重要になります。ここでは、僻地医療拠点病院と僻地診療所をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
無医地区が多い都道府県トップ3は、北海道・広島県・鹿児島県です。このエリアの中でも今回は北海道に的を絞って僻地医療拠点病院、僻地診療所である医療機関をご紹介します。北海道の僻地医療拠点病院は、道南エリアに道立江差病院・八雲総合病院があります。道央エリアでは、JA北海道厚生連倶知安厚生病院・岩見沢市立総合病院 ・砂川市立病院・深川市立病院・伊達赤十字病院・浦河赤十字病院などです。また道北エリアは、名寄市立総合病院・北海道社会事業協会富良野病院・留萌市立病院といった病院が僻地医療拠点病院として指定されています。道南・道北・道央以外の「オホーツク」や「釧路」などのエリアを含めると、北海道には19の僻地医療拠点病院があり、無医地区の医療を支えています。実は、僻地医療拠点病院以外にも「医師派遣」という形で西岡病院や時計台記念病院、社会医療法人社団三草会クラーク病院など16の医療機関も僻地医療に携わっていますので、「まずは僻地医療を体感したい」という方は、このような病院で派遣医師として働いてみるというのも1つの方法です。このように、周辺地域の病院に支えられる形で、道内72市町村の無医地域には88施設の僻地診療所が設置されています。
様々な種類の医療機関が役割を分担・連携し、限られた資源(ヒトモノカネ)を共有するシステムは、僻地医療を提供されている医師からすると心強い仕組みです。しかし一方で、様々な既得権益が影響するという側面を持っています。医師の人事権などをめぐって医療機関を運営する市区町村との間にトラブルが生じてしまい、思い描いていた僻地医療が出来ないという声は決して少なくはありません。離島や僻地医療を志す方は、給与や勤務時間といった求人情報だけでなく「どのような僻地医療を実現させたいのか」「その仕組みづくりを行う上で、医療機関や市区町村との連携はどこまで必要なのか」といった点まで確認することが、納得のいく僻地医療を実現する上で重要になります。
このような点を踏まえて、僻地医療を提供されている医師が発信しているブログや記事に目を通すことでリアルな僻地医療を知ることができるので、この機会にぜひチェックしてみてください。
僻地医療の携わり方も様々な方法があったように、現在募集中の医師求人情報も多種多様です。
今回は、そんな離島・僻地医療で現在募集中の医師求人情報をご紹介します。